2012年12月25日火曜日

次世代シーケンサーの分類(2013年版)

 次世代シーケンサーとは、Sanger シーケンシング法を利用した蛍光キャピラリーシーケンサーである「第1世代シーケンサー」と対比させて使われている用語である。米国を中心に50機関(チーム)以上のベンチャー企業や研究組織がしのぎを削って、次世代シーケンシング技術の開発を行った結果、多様な機器や技術が誕生した。これらの機器や技術の特徴を比較するために、次世代シーケンサー、次々世代シーケンサーなど、分類しようという試みがなされている。GOクラブでは、次世代シーケンサーを第2世代、第3世代、第4世代の3つに分類してきたが、以前にも言及したように、今回の改訂版では、第3世代と第4世代を合体させて「第3世代」に分類することにする。

2012年12月12日水曜日

GnuBIOのシーケンシング技術開発、新しいフェーズへ

 GnuBIOの次世代シーケンシング技術については、これまでGOクラブでも3回取り上げたことがある〔2010年06月11日号、2011年04月26日号、2011年12月25日号〕。GnuBIOは、最近プレスリリースの頻度も多くなり、新しい改良技術の開発が米国国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)の“Advanced Sequencing Technology Awards 2012”を受けたので、今回のGOクラブでは、この改良技術開発を中心にGnuBIOの最新の動向について紹介する。

2012年11月26日月曜日

GenapSysの次世代シーケンシングプラットフォーム“GENIUS”とは

 米国国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)の次世代シーケンシング技術開発の研究グラントである“Advanced Sequencing Technology Awards 2012”を受けた「6種類の新技術」の中に、GenapSys Inc. (GenapSys) が開発を進めている次世代シーケンシング技術である"Gene Electronic Nano-Integrated Ultra-Sensitive" (GENIUS) が含まれている。今回のGOクラブでは、GENIUSプラットフォームを利用した小型ポータブル・シーケンシングデバイスを紹介するとともに、他の技術と比較してみたい。

2012年11月7日水曜日

IntelとPacBioが開発を進める新しい1分子リアルタイムシーケンシング技術」

 2012年9月14日付で、米国国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)が新しい次世代シーケンシング技術開発の研究グラントである“Advanced Sequencing Technology Awards 2012”を供与する「6種類の新技術」を発表した。今回のトピックスとしては、インテル(Intel)とPacific Biosciencesが進める新技術の開発が挙げられる。今回のGOクラブでは、インテル(Intel)とPacific Biosciences(PacBio)の話題を取り上げ、PacBioのシーケンサーの将来像を予想してみたい。

2012年10月22日月曜日

Fluidigmが開発した全自動1細胞単離・核酸調製機

 ここ数年、革新的な1細胞解析技術が数多く発表され、GOクラブでも折をみて紹介してきた。10月15日には、米国NIHが「5年間に渡って70億円以上の資金を投じて1細胞解析研究を推進する」ことを発表した。1細胞解析研究の流れはますます速くなるだろう。今回のGOクラブでは、Fluidigm Corporation (Fluidigm)が今年6月13日に発表した「C1 Single-Cell Auto Prep(全自動1細胞単離・核酸調製機)とその機器に利用されている技術」を紹介する。

2012年10月12日金曜日

新しいナノポアシーケンシング技術“Nano-SBS”発表される

 今年2月に、Oxford Nanopore Technologiesが、プロテイン・ナノポアシーケンサーの発売をアナウンスしたときに、世界中に衝撃が走った。今度は、魅力ある有望な新しいナノポアシーケンシング技術(Nano-SBS)が発表された。また、Genia Technologies, Inc. (Genia)は「Nano-SBSを利用した新型ナノポアシーケンサーの開発を推進する」ことを10月3日に発表した。このNano-SBS技術とGeniaのCMOSシーケンサー技術との融合は、シーケンサー市場の地図を大きく変える可能性を秘めている。今回GOクラブでは、このNano-SBS技術とGeniaの新しいナノポアシーケンサーの開発戦略について紹介する。

2012年9月26日水曜日

PathGEN Dxが7万種ヒト病原体の一斉同時検査キットを発売

 前回のGOクラブでは、今年7月12日に、米国のカリフォルニア大学Davis校とFDAの食品由来病原微生物10万種類ゲノムプロジェクトの開始について紹介した。この発表を意識したのかどうかわからないが、8月23日に、シンガポールのベンチャー企業“PathGEN Dx Pte. Ltd. (PathGEN Dx)”が、「AffymetrixのDNAチップを用いて7万種類のヒト病原体を一斉同時検査できるキットを発売する」ことをアウナンスした。今回のGOクラブでは、この病原体キットの内容を紹介するとともに、次世代シーケンサーによる病原体検査との比較について考察してみたいと思う。

2012年9月13日木曜日

食品由来病原微生物10万種類ゲノムプロジェクトについて

 今年7月12日に、米国のカリフォルニア大学Davis校FDA (Food and Drug Administration) が、食品由来病原微生物10万種類ゲノムプロジェクトを開始することを発表した。「ゲノム情報の一部を利用した遺伝子検査ビジネス」と「ゲノム検査(ゲノム網羅的一斉解析)」を同一視している方もおられるが、両者は異なる概念の検査手法である。今回のGOクラブでは、この発表を題材として、オミックスの意味・意義を説明したうえで、食品由来病原微生物10万種類ゲノムプロジェクトの内容を紹介したい。

2012年8月21日火曜日

マイクロ流路技術を用いた1細胞分離とゲノムシーケンシング

 今年6月26日付のGOクラブで1細胞解析の意義について紹介したが、Stanford大学のQuark教授らがマイクロ流路技術を用いてヒト精子を1細胞ずつ分離し、同一男性由来の計91個の精子の全ゲノム配列決定を行った研究成果が7月20日付のCell誌に発表された。今後もマイクロ流路技術を用いた単細胞分離とゲノム解析/RNA解析の研究報告が多くなるだろう。前回のGOクラブでは、1分子DNA解析に利用できるRainDance Technologies(RainDance社と略す)の新しいDigital PCR機器を紹介したが、今回のGOクラブでは、同じRainDanceが開発を進めている1細胞分離技術について紹介する。また、GigaGen, Inc.もMicrofluidics技術を用いた1細胞分離技術の開発を進めているので、GigaGenの取り込みについても紹介したい。


2012年8月8日水曜日

RainDance Technologies の新しいDigital PCR機器

 RainDance Technologies(RainDance社と略す)は、新しいDigital PCR機器である“RainDrop Digital PCR System”のFirst Access Programの開始を7月26日にアナウンスした。6月26日付のGOクラブで、ゲノム/DNAの1分子解析においる次世代シーケンサーとDigital PCRの利用について述べたが、今回のGOクラブでは、この新しいDigital PCR機器を紹介するとともに、次世代シーケンサーとの比較について論じる。

2012年7月26日木曜日

Complete Genomicsの新技術: 高精度全ゲノムシーケンシングとハプロタイピング

 以前のGOクラブで、「ヒト全ゲノムシーケンシングの受託解析企業であるComplete Genomicsは、IlluminaやIon Torrent (Life Tech)などどの競争が激化し、苦戦が続くであろう」と考察した。その後も、業績は上向かず、今年6月5日には従業員約20%にあたる55人の解雇を発表した。Complete Genomicsは、7月12日に「10~20細胞からの高精度ヒト全ゲノムシーケンシングとハプロタイピングの論文がNature誌に掲載されたこと」をプレスリリースした。この発表が注目を集め、株価も約50%上昇した。今回のGOクラブでは、Complete GenomicsがNature誌で公開した「Long Fragment Read(LFR)技術」を紹介するとともに、Complete Genomicsの今後の展開の可能性について考察してみたい。

2012年7月11日水曜日

新・次世代シーケンサーの新しい分類について考える

 GOクラブでは、次世代シーケンサーの開発競争が「高機能かつ安価な機器・方法」を目標に行われていることから、シーケンシング原理別に第1世代~第4世代に分類し、次世代シーケンサーに関する情報提供を始めた。また、第2世代シーケンサーの進歩などを吟味し、次世代シーケンサーを用途別に分類すると、別の世界が見えてくることも以前考察した。DNA・RNAの調製・精製のトップメーカーであるQIAGENが、6月25日付けのプレスリリースで「Intelligent Bio-Systems(IBS)の買収」を発表した。今回のGOクラブでは、この買収の意味を「用途や利用形態に基づく次世代シーケンサーの新しい分類」の脈絡の中で考察してみたい。

2012年6月26日火曜日

未来を考える(第4回:種、個体、1細胞、そして1分子へ)

 ゲノムシーケンシングをベースとするオミックスの発展は、生命科学に新しい広大な未開拓地があることを教えてくれた。同時に、我々の生命に対する理解に対して一部思い込みがあることも知らされた。種、個体、1細胞、そして1分子レベルでのシーケンシングにより、生命の真実の姿が見えてくる。今回のGOクラブでは、1細胞レベルと1分子レベルでのゲノム解析について、最近のトピックスを交えて考察してみたい。

2012年6月13日水曜日

個別化化粧品と使い捨て半導体DNAセンサー

 これまでのGOクラブでは何回かに渡って、携帯可能な次世代シーケンサーに関する話題を提供してきたが、特定のDNAの検出や定量に利用するポータブル半導体デバイスの開発も進んでいる。しかもIon TorrentのシーケンサーのIonチップのように、半導体チップの多くは使い捨てとなる。今回のGOクラブでは、DNA Electronics Ltdが開発を進める「使い捨て半導体DNA分析デバイス」を紹介する。また、On-the-site(顧客を前にした現場)で遺伝型解析サービスの提供を企画しているGeneONYX Ltdとの連携による「個別化化粧品」サービスの展開についても紹介する。

2012年5月22日火曜日

いつでもどこでもシーケンシング

 Oxford Nanopore Technologies (Oxford Nanopore) がUSB駆動のポータブルDNAシーケンサーの発売を発表したが、いよいよ、いつでもどこでもシーケンシングできる時代を迎える。2010年11月のGOクラブの企画「次世代シーケンサーの新しい分類について考える」において、「5年後(2015年)くらいには携帯可能なポータブルシーケンサーも使われるようになるであろう」と述べたが、時代は予想より速いスピードで進んでいる。これまでのGOクラブでも種々の次世代シーケンシング技術を吟味・考察し、ポータブルシーケンサーとしてはナノポアシーケンサーが主流になると予想した。ところが、LaserGenの最近の発表を見ると、第2世代技術でもシーケンサーのポータブル化が可能であることがわかった。今回のGOクラブでは、このLaserGenのポータブルDNAシーケンサーを中心に、ポータブルDNAシーケンサーの開発の現状について紹介する。

2012年5月9日水曜日

Nature Biotech誌の論文をもとにナノポアシーケンシングの欠点を考察する

 Oxford Nanopore Technologies (Oxford Nanopore) が、今年2月17日にナノポアシーケンサーを今年中に発売することを発表したが、そのシーケンシング技術を科学的に裏付けるデータや論文を発表していない。一方、AkesonらのグループGundlachらのグループがそれぞれタンパク質ナノポアを用いてシーケンシングが行えることを実証した論文をNature Biotechnology誌4月号に発表した。今回のGOクラブでは、これら論文のエッセンスを紹介するとともに、論文のデータからナノポアシーケンシング技術の欠点について考察してみたいと思う。

2012年4月25日水曜日

Quantaporeが開発を進めるNanopore Energy Transfer Sequencing技術

 前回のGOクラブで、シリコンバレーで活動しているQuantapore Inc. (Quantaporeと略す)を紹介したが、今回のGOクラブでは、Quantaporeが開発を進めているナノポアシーケンシング技術であるNanopore Energy Transfer Sequencing(NET シーケンシング)技術の概要について紹介する。また、第1世代シーケンシング技術であるサンガー法の将来についても考察してみたい。

2012年4月5日木曜日

未来を考える(第3回:ナノテクが牽引する次世代シーケンサーの進歩)

 米国では、2001年にクリントン大統領がナノテク研究を国家の戦略目標として重点化してきたが、その成果として次世代シーケンサーの進歩が加速化されている。日本でも欧米の研究の進展に合わせて、ナノテク研究に多くの予算が配分されているが、次世代シーケンサーの開発が進んでいない。今回のGOクラブでは、次世代シーケンサー開発におけるナノテクの役割をまとめるとともに、日本の未来を考えるために、次世代シーケンサーのような革新的な製品を誕生させるための条件を考察してみたい。

2012年3月21日水曜日

Illumina HiSeq/MiSeqシーケンサー vs Ion Torrentシーケンサー

 Illuminaは今年1月10日に「Illumina HiSeq2500の発売とMiSeqのアップグレード」を発表したが、その後に「MiSeqを使った小規模シーケンシングキットやガン遺伝子シーケンシングパネル」についても発表した。今回のGOクラブでは、Barclays Capital Global Healthcare ConferenceでのIlluminaの発表(2012年3月14日)などをもとに、これら新製品について紹介し、Ion Torrentシーケンサーとの比較について考察してみたい。

2012年3月5日月曜日

Oxford Nanoporeを追いかけるGeniaのナノポアシーケンサー

 Genia Technologies, Inc.(Genia)のCEOであるStefan Roever氏のインタビュー(日時・場所:今年2月5日、4th Personalized Medicine World Conferenceの会場)を聞き、Geniaのナノポアシーケンサーに魅力を感じた。Oxford Nanoporeの発表が2月17日であったので、その12日前にこのインタビューが行われたことが興味深い。Roever氏は、「Ion Torrent が開発したCMOS技術」と「ナノポア」を合体させた1分子電気的検出(single molecule, electrical detection)シーケンサーが、「第4世代」でなく、「最終世代シーケンサー」であると主張している。今回のGOクラブでは、Roever氏のインタビューに基づいて、Geniaが開発を進めている新しいナノポアシーケンシング技術を紹介する。

2012年2月21日火曜日

Oxford Nanoporeのナノポアシーケンサー、衝撃的デビュー!

 2月9日付のGOクラブで、「次世代シーケンサーの未来」としてナノポアシーケンサーに対する多数の予言と期待を述べたが、それらをすべて満たすOxford Nanopore Technologies(以下、Oxford Nanoporeと略す)のナノポアシーケンサーが、わずか11日後に発表された。驚くべき衝撃である。GOクラブでもOxford NanoporeのGridIONシーケンサーについて紹介したことがあるが、そのGridIONシーケンサーの性能は驚くべきものであった。さらに衝撃的なデビューは、MinIONと呼ぶシーケンサーである。今回のGOクラブでは、Oxford Nanoporeが今年後半に発売するこれら2種類のシーケンサーを紹介する。

2012年2月9日木曜日

未来を考える(第2回:次世代シーケンサーの現在・過去・未来

 本記事の著者が次世代シーケンシング技術に出会ったのは約15年前である。当時は「円盤状のマイクロ流路技術によるサンガーシーケンシング」、「Lynx Therapeuticsのマイクロビーズ状のシーケンシング(Massively Parallel Signature Sequencing)」、「ハイブリダイゼーションチップを用いたのシーケンシング法」などの開発が進んでいた。今回のGOクラブでは、次世代シーケンシング技術の誕生と進歩を振り返るとともに、次世代シーケンサーの未来を考察してみたい。

2012年1月25日水曜日

Ion Torrent 新シーケンサー発売へ

 新年明けてから、「Ion Torrentの新シーケンサーProton Sequencerの発売」と「Illumina  HiSeq2500 Sequencerの発売」という2つの大きなニュースが発表された。Ion Torrent は、"The Chip Is The Machine."と謳っていたので、新シーケンサーの発売は当面ないと思っていた。したがって、今回のIon Torrent Proton Sequencerの発売は意外であった。今回のGOクラブでは、Proton SequencerとPGM Sequencerを比較して、それぞれの用途について考察してみたい。

2012年1月10日火曜日

未来を考える(第1回:DTC genomics ベンチャーと予防医療)

 昨年は、Life Tech社とIllumina社から、デスクトップシーケンサー(Ion Torrent PGMシーケンサーとMiSeqシーケンサー)が発売され、ゲノム研究もゲノムセンターから一般研究室に普及する時期に移行したと言える。この次世代シーケンサーの普及がもたらす社会変革について、GOクラブで今後何回かに渡って考察してみたいと思う。次世代シーケンサーの登場が大きな変革をもたらす主な分野は「医療」である。すでに「個別化医療」への応用は始まっているが、未来を考えた場合、何よりも「予防医療」を普及させる大きな原動力になる違いない。今回は、次世代シーケンサーが拓く「予防医療」について考えてみたい。