Proton Sequencerの性能と他のシーケンサーとの比較
Life Technologiesが1月10日に発表したプレスリリースの内容やLife Tech.のホームページの情報などから、Proton Sequencerの性能とPGM Sequencerとの比較を下表にまとめた。両者とも、ベンチトップシーケンサー(デスクトップシーケンサー)と位置付けられるが、Proton Sequencerの出力量(リード長200 bpのときに1ラン=60 Gb)はPGM Sequencerと大きく異なっていることがわかる。 ライブラリー構築の時間はライブラリーの種類により異なるが、通常の200 bp程度の断片ライブラリーであれば、 New England Biolabs NEBnext Fast Library Construction Kitsを使えば、約2時間で終了する。したがって、シーケンシングに要する時間はProton Sequencerの場合、最短約11時間(2時間+4時間+5時間)と見込まれる。 ここで、Proton SequencerをIlluminaのシーケンサーと比較してみよう。Proton Sequencerは、ベンチトップシーケンサーであるIllumina MiSeqと比較すべきと思われるが、むしろIlluminaが最近発表したHiSeq2000の後継機であるHiSeq2500と比較すべきであろう。HiSeq2500は、通常モードでは2つのフローセルを用いると、600 Gbの配列が11日で得られ、また別のモードでは最短27時間で120 Gbの配列が得られることが発表された。Proton Sequencerも近い将来リード長が400 bpになり、出力量も120 Gbになると予想されるので、Proton SequencerはHiSeq2500の競合となるであろう。 以前のGOクラブで、Ion Torrent のシーケンサーの利点として、テンプレート調製とシーケンシング反応が別々に行え、かつシーケンシング時間が短いことを紹介した。よって、Proton Sequencerで1日3ランのシーケンシング(1日3人の全ゲノムシーケンシング)を行えると想定すると、1年間(365日間)で1,095人の全ゲノムシーケンシングが行えることになる。「お手軽な1台で、1,000人ゲノムを1年で達成!」である。 一方、Illumina HiSeq2500で、2つのフローセルを同時に使って通常モードで配列決定を行うと、11日間で4人の全ゲノムシーケンシングが行える。したがって、365日間で132人の全ゲノムシーケンシングが行えることになる。これはProton Sequencerの「8分の1」のスループットである。HiSeq2500で最短27時間-出力量120 Gbのモードでシーケンシングした場合、1.5日で1ランを行うと、365日間で243人の全ゲノムシーケンシングが行えることになる。これはProton Sequencerの「4.5分の1」のスループットである。 以上、Proton Sequencerは安価なベンチトップシーケンサーでありながら、Illumina HiSeq系シーケンサーを超えるポテンシャルを有していると言える。
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Proton Sequencer用Chipと従来のIon Chipとの比較
Life Technologiesが1月10日に発表したプレスリリースの内容やLife Tech.のホームページの情報などから、Proton Sequencer用Chipと従来のIon Chipとの比較を下表にまとめた。 Ion Proton Chipは、Ion 316/318よりと比べてセンサー数が大幅に増加している。チップのサイズは若干大きくなっている程度なので、センサーウェルはかなり小さくなっていると想定される。Life Technologiesは「1,000ドルゲノム達成、しかも1日以内でヒト全ゲノムシーケンシングである。」と謳っているが、1,000ドルは当面チップの価格である。この謳い文句から、Ion Proton II は1,000ドルで発売され、と同時にIon Proton I の価格はディスカウントされると予想される。
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Proton SequencerとPGM Sequencerの用途
冒頭でも述べたが、Ion Torrent シーケンサーは、機器はしばらくの間同一で、チップのみが進化すると予想していた。上述のように、Proton SequencerとPGM Sequencerとは塩基配列出力量が大きく異なる。Ion 316/318系チップとIon Proton系チップではサイズが異なるので、Ion 316/318系チップはProton Sequencerには使えないと予想される。利用者としては、1つの機器ですべての実験ができることが望ましいが、両機種の用途は大きく異なるであろう。Proton Sequencer用の小型チップが開発されないことを前提とすると、Proton Sequencerはエキソーム解析も含めて高等動物全ゲノム解析に向いており、PGM Sequencerは微生物ゲノム解析やAmpliconシーケンシングに向いている機種と言えよう。 弊社が次世代シーケンシング解析サービスを始めたのは約4年半前であるが、GOクラブの企画は約2年前に今回紹介したIon Torrent シーケンサーに出会ったことがきっかけで開始した。「Ion Torrent シーケンサーが、将来1台1ランでヒト全ゲノムシーケンシングを達成できるであろう。」という記事を書いたが、2年後には実現されることになった。驚くほど速い進歩である。 |