2010年10月12日火曜日

アメリカ以外での次世代シーケンシング技術の開発状況


 アメリカは、国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)による1000ドル・ヒトゲノム解読技術の開発プロジェクトの推進が功を奏して、50以上ともいわれる多彩な次世代シーケンシング技術の開発が行われてきた。今回のGOクラブでは、アメリカ以外の国での次世代シーケンシング技術の開発について紹介する。


イギリス

 イギリスは、アメリカに次いで、次世代シーケンシング技術の開発が進んでいる国である。以下に、イギリスのシーケンシング技術を開発している(開発していた)主な企業を挙げる。
Solexa : Illumina社の次世代シーケンサーは、Solexa, Ltd.が開発したSequencing-by-SynthesisによるDNA配列決定法を利用している。
Oxford Nanopore Technologies: タンパク質ナノポアを利用した第4世代シーケンサーの開発を進めているベンチャー企業である。本シーケンサーの内容については、別の機会に紹介する予定である。
Mobious Systems: Mobious Biosystemsは次世代シーケンシング技術の開発を進めているベンチャー企業(1999年に設立)である。DNAポリメラーゼによりヌクレオチドが取りこまれたときの構造変化と質量の変化を検出することによりシーケンシングすることを試みている。本技術は、ごく早期の段階と思われ、シーケンサーの開発まで進んでいないと思われる。

台湾

 台湾シリコンバレーがあるHsinchu市(新竹市)にあるthe Industrial Technology Research Institute (ITRI) で開発された第3世代シーケンシング技術をもとに、ベンチャー企業Crackerがシーケンサーの開発を進めている。Crackerが開発しているシーケンサーは、開発ステージが進んでいると思われ、Archon GenomicsのX prizeにもノミネートした。本シーケンサーの内容については、別の機会に紹介する予定である。

日本

 日本では、ベンチャー企業「テラベース」が比較的早期に、テラベースシーケンサーと称して、電子顕微鏡を利用した次世代シーケンシグング技術の開発に着手していた。その後、開発のスピードは鈍化しているらしく、研究開発の進展に関する発表はない。現在、GOクラブが把握している限り、日本では、3チームが次世代シーケンサーの開発を進めているが、どのプロジェクトも非常にアーリーなステージにあるようだ。
テラベース: かなり前から、位相差電子顕微鏡技術を応用した次世代シーケンシグング技術の開発を進めているが、ホームページを見る限り、技術開発は進んでいないと思われる。
九州大学グローバルCOE : 九州大学工学研究院で半導体ナノポア型シーケンサーの開発が進められている。平成17年度・科学技術振興機構のシーズ育成プロジェクトのグラントで「半導体ナノポアDNAシーケンサーの設計と試作」が採択されている。
・大阪大学産業科学研究所 : 特任教授・川合 知二氏が中心となって、 高分解能STM(走査型プローブ顕微鏡)によるシーケンシング技術の開発が進められている。

中国

 中国では、Zhimin Wang (the School of Agriculture and Biology at Shanghai Jiao Tong University)らが中心となって、1本鎖DNAをエキソヌクレアーゼで消化することにより生じた塩基をナノポアなどで検出する技術の開発を進めている。本技術は、1分子リアルタイムシーケンシングに該当するので、第3世代シーケンシング技術に分類される。

オランダ

 Kavli Institute of Nanoscienceの,Cees Dekker博士らがGraphene Nanoporeを利用した第4世代シーケンシング技術の開発を進めているが、本技術については、以前GOクラブでも簡単に紹介した