2010年8月11日水曜日

第3世代、第4世代シーケンサーに負けていない第2世代シーケンサー


イルミナ社が新キット・TruSeq SBS Sequencing kitを発売

 Illumina社は、7月26日に、次世代シーケンシング用の新しいキット“TruSeq SBS V5 GA Kit”の発売を発表した。Illumina GAII シーケンサーはShort read sequencerとも呼ばれ、短い配列しか読めなかった。新発売のキットを用いると、リード長が最大150 bpになった。しかも配列決定精度が向上し、100 bpリードの場合、Q30(99.9%の精度)で読めるリードは85%になる。したがって、これまで新規ゲノム配列決定には難があると言われていたIllumina シーケンサーも、新規ゲノム配列決定に十分利用できるであろう。
 今回発表されたキットは、GAIIxとGAIIe用であり、HiSeq2000シーケンサー用のキットは発売されていない。Illumina GAIIx シーケンサーを用いて、リード長 150 bpでPaired end またはMate-pairで配列決定を行った場合、1ランあたりの配列出力量は95 Gb以上になる。ヒトゲノム配列に換算すると、約30倍である。このように、Illumina GAIIx シーケンサーでも1ランでヒト全ゲノム解読を行えるスペックとなった。廉価版シーケンサーであるIllumina GAIIe を用いた場合、リード長 150 bpで、Paired end またはMate-pairのシーケンシングを行うと、1ランで38 Gbの配列データが出力される。もしHiSeq2000でも同等のキットが使えるようになると、1ラン(9.5日間)で2 x 150 bp & 10億リードを読めるので、約300 Gb分(冗長度約50×の場合、ヒトゲノム2人分のデータ量に相当)出力できる。
 Illumina GAシーケンサーは発売時のキャッチフレーズが(Solexa) 1G analyzerであったので、比較的短期間でスペックが300倍になったことは驚くべき進歩と言えよう。


Life Technologiesの第2世代シーケンサーSOLiD4hqの性能

 Life Technologiesの第2世代シーケンサーであるSOLiDは、Illumina シーケンサーを追いかける。
SOLiD4がすでにリリースされているが、Fragment シーケンシングの場合、50 bp リードで1ランあたり40~50 Gbの出力である。Mate-pair シーケンシングの場合、2 X 50 bp リードで1ランあたり80~100 Gbの出力である。今後、アップグレート版であるSOLiD4hqを利用できるようになるが、リード長が75 bpになるとともに、出力量が300 Gbで、かつGCバイアスがなくなることが発表されている。


第2世代シーケンサーに対するGOクラブの評価

 Illumina シーケンサー、そしてSOLiDシーケンサーともに性能が各段に進歩したとはいえ、ガンゲノムなどのシーケンシングにおいては、単独のシーケンサーを用いた場合、変異かエラーなのか判別がつかないことが多い。したがって、変異同定などの場合、2種のシーケンサーを用いて配列決定を行い、コンセンサス変異を特定することが望まれる。
 一方、同じ第2世代シーケンサーであるRoche-454 FLX Titaniumシーケンサーの場合には、出力量は0.4 Gbである。したがって、1ランあたりの出力量は、Illumina シーケンサーとSOLiDシーケンサーにははるかに及ばない。ただし、Titaniumシーケンサーは近々リード長が600~800 bpになることが公表されており、利用用途はサンガーシーケンシングと重複していくことになる。