2014年6月23日月曜日

次世代シーケンサーの発売を目指すベンチャー企業の動向

 今年初めのGOクラブでは、「新しい次世代シーケンサーの発売ラッシュの年になるか」というタイトルで、今後の次世代シーケンサーの発売に対する展望を述べた。しかしながら、今年春頃から、次世代シーケンサーの発売を目指すベンチャー企業の活動に変調が見られる。今回のGOクラブでは、これらベンチャー企業の動向をまとめる。


QIAGEN、GeneReaderの発売を延期

  今年、QIAGENが次世代シーケンサーGeneReaderを発売する予定であり、その登場を楽しみしていた。しかしながら、AllSeqが提供しているウェブニュースによると、GeneReaderの発売は来年に延期されることになった。GOクラブの予測では、QIAGENはGeneReaderの位置づけとして、Illumina MiSeqとHiSeqの中間ゾーンの機種とする予定であるとしていた。しかし、Illuminaが今年初めにNextseq500の発売を発表したことから、QIAGENがGeneReaderのスペックなどを再検討せざるを得なくなったためと推測する。

BioRadがGnuBIOを買収、そしてシーケンサーの発売を延期

  GnuBIO, Inc. (GnuBIO) は、次世代シーケンサーβ版を昨年4月に提携機関に提供し、早ければ今年にも発売する予定であった。このような中、BioRadが今年4月10日にGnuBIOを総額110万ドルで買収することを発表した。この発表と同時に、シーケンサーの今年中の発売は延期され、2年以内の発売を目指すことが明らかにされた。発売は延期されたが、BioRadという優良企業がGnuBIOのシーケンサー開発をバックアップしたことは、ユーザにとっては好ましいことと思う。GnuBIOのシーケンサーの出力量は大きくはないが、シーケンシング精度は極めて良いため、臨床診断用途では他の機種と競争できる魅力がある。

Oxford NanoporeのMinIONシステムのデータが公開される

  昨年末、Oxford NanoporeのMinIONデバイスの早期利用プログラム(MinIONアクセスプログラム;MAP)の募集があり、今年3月頃からMAP採択者に対してMinIONデバイスの配布が始まった。MAP採択者は、提案した研究テーマに関して成果が出れば、データを公開することが許可されている。

 今年の6月11日に、Pseudomonas aeruginosa strain 910のゲノム配列の一部をMinIONデバイスを用いて決定したデータが、Warwick Medical SchoolのNicholas Lomanらのグループから発表された。8,476塩基の配列1つの登録がなされているが、NCBIのデータベースに対して相同性解析(BLAST解析)を行ったところ、既存のPseudomonas aeruginosa株(LESB65株)のゲノム配列との相同性が最も高かったが、その一致率は約70%と比較的低かった。塩基配列決定精度が悪いのかどうかについては不明であり、このデータだけではMinIONシステムの性能を評価することはむずかしい。
 MinIONデバイスは多数配布されたが、解析結果の開示はこの発表が初めてであり、今年中のMinIONデバイスの発売はむずかしいのではないかと予想する。

GenapSysの次世代シーケンサーGENIUS110は来年発売か?

 今年の2月25日付のGOクラブで、GenapSysが次世代シーケンサーGENIUS110を開始し、アーリーアクセスプログラムを開始することを発表したと紹介した。GOクラブでは以前、GenapSysが開発を進めているシーケンサーの技術を紹介したが、市販機となるGENIUS110の内容をGenapSysは明らかにしていない。当初、アーリーアクセスプログラムの締切は5月末日であったが、まだアーリーアクセスプログラムの募集を締め切っていない。シーケンサーβ版ができ上がっているので、来年には発売される可能性がある。

Roche、Geniaを買収

  上に4種類の次世代シーケンサーの発売に関する見込みを記載したが、これらに続いて発売が近いシーケンサーとしては、ナノポアシーケンサーの開発を進めているGenia Technologies, Inc.(Genia)が挙げられる。Rocheは最近(6月2日付で)このGeniaを買収することを発表した。買収金額は総額350万ドル(初回の支払いが125万ドルで、マイルストーンペイメントが225万ドル)である。なお、Geniaの次世代シーケンシング技術はGOクラブでも以前紹介した。Rocheは、すでに別の次世代シーケンサーベンチャー企業であるPacific Biosciencesとも提携しており、今回のGeniaの買収により、次世代シーケンサーのポートフォリオを強化することができる。なお、Geniaのシーケンサー発売に関する発表はない。また、Rocheは今年の4月7日付で、医療現場で使えるSample-to-Answer型分子診断機器の開発を進めているIQuum, Inc.を350億円で買収しており、DNAやたんぱく質に着目した高速診断機器のビジネスを重点化している。

QuantaporeとStratos Genomicsの動向

  最後に、Oxford NanoporeとGeniaに続いてナノポアシーケンサーの発売を目指しているQuantapore Inc.(Quantapore)Stratos Genomics Inc.(Stratos Genomics)が、最近資金調達に成功し、シーケンサーの開発を加速化していることを紹介する。

 Quantaporeは、Martin Huber博士が創設した、次世代シーケンシング技術開発のベンチャー企業であり、そのシーケンシング技術は以前のGOクラブでも紹介した。Martin Huber博士は、Ion TorrentでpHセンシング-半導体を利用したシーケンサーの開発に携わっていたが、Ion TorrentがLife Technologiesにより買収されたときに、Ion Torrentを退社した。このたびQuantaporeは、シーケンサーの開発を推進するために、シリーズBのファイナンスとして35百万ドルの資金を調達できたことを発表した

 Stratos Genomicsは、Sequencing by expansion (SBX) 法(=配列決定すべきDNAを鋳型として塩基特異的レポーターとなる合成DNAを連結し、長鎖の代理ポリマーDNAを調製後に、ナノポアを用いてシーケンシングする方法)を用いて、ナノポアシーケンシングの欠点である「DNAのナノポア高速通過に伴うリードエラー」の解消に加えて、「塩基同定精度」の改善を目指している。昨年秋には、210塩基の長さのDNAをSBX法により解読できることを示している。このような実績をもとに、シーケンサーの開発を推進するため、シリーズBのファイナンスとして10百万ドルの資金を調達できたことが、今年5月22日付でニュースとして発表された