2012年3月5日月曜日

Oxford Nanoporeを追いかけるGeniaのナノポアシーケンサー

 Genia Technologies, Inc.(Genia)のCEOであるStefan Roever氏のインタビュー(日時・場所:今年2月5日、4th Personalized Medicine World Conferenceの会場)を聞き、Geniaのナノポアシーケンサーに魅力を感じた。Oxford Nanoporeの発表が2月17日であったので、その12日前にこのインタビューが行われたことが興味深い。Roever氏は、「Ion Torrent が開発したCMOS技術」と「ナノポア」を合体させた1分子電気的検出(single molecule, electrical detection)シーケンサーが、「第4世代」でなく、「最終世代シーケンサー」であると主張している。今回のGOクラブでは、Roever氏のインタビューに基づいて、Geniaが開発を進めている新しいナノポアシーケンシング技術を紹介する。


Geniaのナノポアシーケンシング技術

 Geniaは、2009年3月にシリコンバレーのMountain View市に設立されたベンチャー企業である。2011年4月に、シリーズA増資を行い、Life Technologiesからも出資を得ている。今年に入り、数百ナノポアのCMOS型ナノポアシーケンサーのプロトタイプを完成させ、来年のシーケンサーの発売を目指して研究開発を加速化させている。Geniaが開発を進めているナノポアシーケンシング技術の概要を、Oxford Naporeの技術と対比させて下表にまとめた。

項目\シーケンサー
Oxford Nanopore
Genia
ナノポアの種類タンパク質ナノポアタンパク質ナノポア
ナノポアを埋め込む膜人工ポリマー膜脂質2重層(現在)
DNA通過速度制御DNAポリメラーゼ電気的制御
塩基配列検出法受動型センサーCMOSセンサー
配列決定速度
20~400塩基/秒/ポア
1塩基/秒/ポア
ポア数(発売時)
2000個/chip
100万個/chip
配列決定エラー率4%(1%;2013年)未公表
デバイスUSB駆動型ポータブル機器USB駆動型ポータブル機器

 Geniaの技術の売りは、ナノポアシーケンシングとIon TorrentのCMOSチップ技術を合体させた点である。Oxford Naporeは受動的センサーアレイを用いているが、GeniaはCMOS技術を用いているので、ナノポアの集積度を上げることができる点が有利である。Geniaの技術は、DNAがマイナスに荷電していることに着目して、電気的にナノポアに配置させ、ポア通過速度も電気的に制御できることが特徴である。DNAがナノポアを通過する速度を制御できるだけでなく、DNAのナノポア内での前進後退も可能であるので、同じDNAを何度も読むことができる。このような技術によりリード精度を向上させることを狙っている。ただし、1秒あたりに解読できる塩基数は、Oxford Nanoporeの1/20~1/400なので、全体としてのスループットでは、GeniaとOxford Nanoporeとの間では大きな差がないように思える。なお、まだモデル実験だけでなので、配列決定エラー率についてはまだわかっていない。

今後の展開について

 Geniaは社員数が15名程度の小さなベンチャー企業であるが、Life Technologiesの出資を受けている。したがって、Life Technologiesの傘下にあるIon Torrentとの協業によりナノポアシーケンサー開発が加速化され、Genia CEOのStefan Roever氏が目指す2013年内のシーケンサー発売も可能であろう。一方で、IlluminaはOxford Nanoporeに出資していることから、今後Oxford Nanoporeとの競争についても目が離せない。本格的なナノポアシーケンサー利用の時代も間近に迫ってきた。