2014年1月6日月曜日

2014年、新しい次世代シーケンサーの発売ラッシュの年になるか

 次世代シーケンサーの世界は、Illumina, Inc. (Illumina) の独走状態が続いてきた。しかしながら、BGI による50台のIon Protonシステムの購入に関する発表(昨年10月)、Oxford Nanopore Technologies Ltd. (Oxford Nanopore) によるナノポアシーケンサーの早期利用プログラムに関する発表(昨年10月)など、最近ではIlluminaの快進撃にも陰りが見え始めてきている。さらに、今年はQiagenのGeneReaderや GnuBIO, Inc. (GnuBIO) のシーケンサーの発売も予定されている。今回のGOクラブでは、今後の次世代シーケンサーの発売に関する予想をまとめる。


QiagenのGeneReader

  Qiagenは、2012年6月にIntelligent Bio-Systemsを買収し、Intelligent Bio-Systemsの“PinPoint Miniシーケンサー”をもとにした次世代シーケンサーの開発を進めてきた。このシーケンサーは近々“GeneReader"という名称の機器として発売されると予想される。最大の特徴は、20個の独立したフローセルを扱え、20個のサンプルを個別に随時シーケンシングできる点である。また、QiagenはDNA精製キットで著名な企業であり、DNA精製・ライブラリー調製機とシーケンシング用テンプレート調製機をセットで利用できる点も特徴的である。また、Qiagenは、昨年4月のIngenuity Systemsの買収に続いて、昨年10月にCLC bioの買収を発表した。Qiagenは、これら2社のバイオインフォマティクス・ベンチャー企業の買収により、サンプル調製からデータ解析結果の表示までのトータル・ソリューションを提供することを目指しているものと思われる。

GnuBIOの次世代シーケンサー

  GnuBIOは、昨年(2013年)4月に次世代シーケンサーのβ版を共同研究先に設置している。今年中に、この機器の市販版をリリースするものと予想される。GnuBIOのシーケンサーの特徴は、リード精度が非常に優れている点とライブラリー調製からシーケンシングまでの工程を全自動で実施できる点である。リード精度については、QV70(1千万塩基に1個のエラー率)でリード長が1,000 bpの配列が得られることが発表されている。なお、市販機の用途としては、当面はtargeted sequencingに特化したものとなるであろう。

Oxford Nanoporeのナノポアシーケンサー

  Oxford Nanoporeは、昨年10月にナノポアシーケンサー(MinIONシステム)の早期利用プログラム(MAP)について発表を行った。その後、MAPではトラブルなく登録を受け付けていることから、早ければ今年中にナノポアシーケンサーの発売が実現するであろう。なお、Oxford Nanoporeはシーケンシングデータをまだ公開していないが、2月12日~15日にフロリダ州Marco Islandで開催される第15回AGBTミーティングで、ナノポアシーケンサーの実データが公表されることが期待される。

2015年以降に発売が期待される次世代シーケンサー

  上述の3社以外で次世代シーケンサーの開発が進んでいる企業としては、Genia Corporation (Genia) とGenapSys, Inc. (GenapSys) が挙げられる。

 Geniaは、Nano Tagシーケンシング法を用いたナノポアシーケンサーの開発を進めている。「今年内のナノポアシーケンサーの発売に漕ぎ着けたい旨」の発表を行っていることから、機器の開発は進んでいるものと予想する。Oxford Nanoporeのシーケンサーの競合になる可能性があろう。

 GenapSysは、GnuBIOと同様に、DNAをチップ内に注入すると、全自動でライブラリーを調製し、シーケンシングを実行するSample-to-Answer型シーケンサー(GENIUS 110システム)の開発を進めている。GenapSysは、本機器の市販を実現するために、昨年11月に37百万ドル(約37億円)のシリーズBラウンドの資金調達を行うことを発表した。したがって、市販に向けたシーケンサーの開発を進めているであろう。GENIUS 110システムのシーケンシング法については詳細な発表は行われていないが、Ion Torrentシーケンサーと同じく、pHセンサー型半導体チップを用いてシーケンシングを行うものと推測される。

次世代シーケンサー発売済企業の戦略

  IlluminaシーケンサーIon Torrentシーケンサーなどの発売済シーケンサーの動向については、最近のGOクラブで紹介した。なお、Illuminaは、Univ. of WashingtonのJens Gundlach博士らが開発しているナノポアシーケンシング技術のライセンスを受けたことを昨年10月に発表していることから、SBS法に基づく現行のシーケンサー以外にナノポアシーケンサーの開発を進めているものと思われる。

 一方、最初に次世代シーケンサーを発売したRoche-454 Life Sciencesは、2016年中頃に廃業することを発表した。したがって、2年後には現行機を利用できなくなってしまう。Roche Diagnosticsは、454 Life Sciencesの廃業のアナウンスとの引き換えに、昨年9月にPacific Biosciencesに資金を提供し、臨床診断用シーケンサーの開発を進めることを発表している。なお、このシーケンサーと現行機種との関係やその上市時期は明らかにされていない。