2011年7月11日月曜日

454 FLXシーケンサーのロング・リード・アップグレード、正式発表される

 かなり前から、Roche 454 GS FLXシーケンサーで最大1,000 bp/リード読めるアップグレードが可能になることが話題になっていたが、ついに、454 Life Sciencesは、6月28日付けで、このロング・リード・アップグレードを正式に発表した。既存の機種もオンサイトでアップグレードできるほか、アップグレード機種であるGS FLX+ システムも発売された。サンガーシーケンシングに匹敵するリード長とリード精度を達成できるGS FLX+ システムは、他の次世代シーケンサーとは一線を画する魅力があり、今回のGOクラブで取り上げる。


GS FLX+ システムの改良点

今回のアップグレードでは、試薬のChemistryが改良され、かつ試薬容量も大きくなった新しいシーケンシングキットXL+を使うことになる。そのほ か、ソフトウェアの改良もなされ、また試薬の容量も大きくなるので、シーケンサー機器の試薬を入れるスペースの改良が施されている。これらの改良により、 Pyrosequencing反応のサイクル数を増すことが可能になり、リード長が従来機の約1.5倍になっている。その結果、リード長が平均700 bp(最大1,000 bp)になったが、従来機と比べて配列決定精度は変わらず、むしろコンセンサス精度では、若干良くなっている。

GS FLX+ システムのスペック

 アップグレード機種FLX+では、新しいシーケンシングキットXL+に加えて、従来キットのXLR70も使える。両キットの性能比較を下表に示す。なお、小型シーケンサーであるGS Junior システムに関しては、ロング・リード・アップグレードは発表されていない。

項目\キット
GS FLX Titanium XL+
GS FLX Titanium XLR70
リード長
最大1,000 bp(平均700 bp)
最大600 bp(平均450 bp)
1ランあたり塩基配列出力量
700 Mb
450 Mb
リード数~1,000,000 リード~1,000,000 リード
~700,000 amplicons
コンセンサス配列決定精度
(冗長度15×の場合)
99.997%99.995%
ラン時間23時間10時間

GS FLX+ システムの用途

GS FLX+ システムは、他の次世代シーケンサーに対して、下記の用途に関しては、明らかに優位な点が認められる。

1. 新規ゲノム配列決定
Illuminaシーケンサーでも新規ゲノム配列決定を行えるようになったが、リード長が短いので、繰り返し配列の存在により、コンティグ形成が阻害される。GS FLX+ システムではサンガーシーケンシングに匹敵するリード長を実現しているので、de novo Assemblingでは優れた結果が得られることがすでに証明されている。

2. Transcriptome Sequencing (Transcriptome Profiling)
454 Life Sciencesも本アプリケーションに関して詳しい資料を公開しているが、cDNAのスプライシングバリアントを含めて、cDNAの構造を解析するには優れている。

3. Metagenomic Sequencing
メタゲノム解析では多種類の生物のゲノム配列が混在しているので、リード長が長いことは、assemblingも含めて優位な点が多いので、メタゲノム解析では454 FLX+ システムの優位性は変わらない。

4. Amplicon Sequencing (16S rDNAシーケンシングなど)
PCR産物のAmplicon Sequencingに関して、454 GS FLXシーケンサーが優位性があることが変わらない。ただし、今回の新キットはAmplicon Sequencing には対応していないので、旧キットを利用する必要があることが留意点である。