2011年6月24日金曜日

NobleGenのナノポアシーケンシング技術、開発進む

 GOクラブでは、約1年前に、NobleGen Biosciences (NobleGen) が開発を進めているソリッドステート・ナノポアシーケンシング技術を紹介した。その後、NobleGenは、2010年9月に米国国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)の次世代シーケンシング技術開発グラントである“Advanced Sequencing Technology Awards 2010” に当選し、4,160,000ドルの研究資金を得た。この1年の間にNobleGenのシーケンシング技術(Optipore Sequencingと名付けられた)の開発が進展し、ナノポアシーケンサー開発において、Oxford Nanopore、NABsysに次いで、シーケンサー上市に近いポジションにいると推測される。今回は、NobleGen のOptipore Sequencing技術開発の進捗について紹介する。


サンプル調製の自動化

約1年前のGOクラブで は、Optipore Sequencingの場合、被験DNAの塩基を直接読み取るのではなく、まず生化学的手法により1塩基を10塩基に変換した後、各10塩基に対して分子 ビーコンをハイブリダイズさせることにより、シーケンシング用サンプルを調製することを紹介した。ただし、NobleGenのナノポア・シーケンシング技 術は、シーケンシング用DNAサンプルの調製に手間がかかることが、実用上コストおよび操作性の点で懸念材料であることを述べた。ところが、 NobleGen Biosciencesの最近の発表によると、ロボット機器を用いて、シーケンシング用DNAサンプルの調製を自動化できることがわかった。このように、サンプル調製が自動化でき、その時間も5時間と比較的短いので、臨床検査などに用いるのに特に大きな問題はないと思われる。

シーケンサーの開発

NobleGenは、2011年末までの目標として、(1)各リードにつき、10~20塩基を読めるシーケンシング用DNAサンプルの調製、(2)シーケンシング・システムの設計を終える、(3) アプリケーション関連の特許出願、そして(4) ナノポア製造計画の立案を挙げている。最近、16塩基のシーケンシング用DNAサンプルを調製できたことが発表された。 1年前には、100×100=10,000個のナノポアで、1ポアあたり1秒間に200塩基読むことを目標としていたが、最近、 400×400=160,000個のナノポアで、1ポアあたり1秒間に1,000塩基読むことを目標としている。この目標に到達すれば、1時間で500 Gbの出力があり、15分間でヒトゲノムを30×の冗長度で読める。
シーケンサー自体は、ソリッドステートナノポアが肝であり、そのポアをDNAが通過するときに発する蛍光をCCDカメラが検出すればよい。酵素反応は必要ないことから、簡便なシーケンシング装置になると予想される。
NoblegenのCEOであるFrank Feist氏は、2014年までに、戦略的買収者にとって魅力あるシーケンサー・プロトタイプを開発すると述べていることから、自社でシーケンサーを製 造・販売するのではなく、すでに販売網を持つ機器メーカーに技術を売却する方針のようである。Feist氏は、シーケンサー・プロトタイプの開発には、さ らに15百万ドルが必要であると述べているので、最近の技術開発の進捗をもとに、ベンチャーキャピタルなどから増資を募るものと思われる。

今後の展望

ナノポア・シーケンサーの中では、“Oxford Nanopore GridION system”の上市が最も早いと思われる。これに、NABsysとNoblegenが続く。 NABsysの技術の場合、6塩基ずつに配列を読み、6塩基の配列をプログラムで連結していく原理で塩基配列を決定する。シーケンシング原理だけを比較す ると、NoblegenのOptipore Sequencingの方が優れていると思われるので、今後のシーケンサー開発の進展に期待したい。