Lightning Terminatorsを用いるLaserGenのシーケンシング技術とは
LaserGenのシーケンシングの原理は、IlluminaやIntelligent Bio-Systemsの技術と同じく、4種類のNucleotide reversible terminatorsを用いたSequencing-By-Synthesis (SBS) 法に基づいている。その詳細については、次の論文を参照してほしい。 LaserGenが用いているreversible terminatorsは、Baylor College of MedicineのMetzker博士らが開発したもので、右図のような構造を持っている。IlluminaとIntelligent Bio-Systemsのreversible terminatorは、デオキシリボースの3'-OH基がブロックされていることにより、次のヌクオチドの結合が行われない。一方、LaserGenの reversible terminatorは、右図の「開裂停止部分」の構造がDNAポリメラーゼによる反応を一時的に阻害して、次のヌクオチドの結合を阻止する。3'-OH 基がブロックされていると、多くの場合DNAポリメラーゼによる3'-OH修飾ヌクレオシドの取り込みが悪いので、LaserGenは上図の terminatorの方が他社のものより優れていると期待している。LaserGenのreversible terminatorは、Lightning terminatorとも呼ばれるが、「開裂停止部分」の構造が、光感受性の2-ニトロベンジル基となっており、光(紫外線)により開裂し、天然型のヌク レオチドに戻るので、次の塩基の合成が可能になる。 ライブラリー作製は、現段階ではemulsion PCR法を用いているが、今後は他の方法の採用も予定しているらしい。 |
LaserGenのシーケンシング技術の優位性は?
LaserGenの発表によると、他社のreversible terminatorsを用いたSBS法と比較した場合、LaserGenのLightning terminatorを用いた方がシーケンシング精度が高くなることを期待している。他社の蛍光検出は1種類のレーザー照射により励起される光を検出する ことにより塩基の検出同定を行っている。一方、LaserGenの場合、独自開発のPulsed Multiline Excitation (PME) 技術を採用している。このPME技術は、(1) それぞれの色素に対して励起光が最大になる特性を持つ4種類のレーザーを用いているので、検出シグナル強度が高い点、(2) それぞれの色素から発生される光の波長のクロストークがほとんどない点、(3) それぞれ光のほとんどすべてを直接集光することにより塩基を同定できる点の3点が優れた点である。したがって、LaserGenは、このPME技術と Lightning terminatorとの組み合わせによって、他社より高いシーケンシング精度を出せることに自信を持っているようである。 なお、PME技術の詳細については、次の論文を参照してほしい。 |
今後のシーケンサー市場におけるLaserGenのポジショニング
第2世代シーケンサーの開発企業については、以前のGOクラブで まとめているが、GOクラブで把握している10社の第2世代シーケンサーの開発企業のうち、Lightspeed Genomicsを除く9社については、すでにシーケンサーの開発状況が明確になっている。10社のうち7社については、シーケンサーが発売されたか、ま たは利用できるにように状態になった。なお、Helicosはシーケンサーの販売を中止しており、診断分野ビジネスにシフトした。SBS法を利用する第2 世代シーケンサーに関しては、Illuminaシーケンサーが市場を占有しているので、LaserGenがシーケンサーを発売し、シェアを広げていくこと は容易でないだろう。特に、Illuminaシーケンサーは膨大な量の配列データを生産できるようになっており、多くのゲノムセンターで利用されているの で、この分野での競争は困難である。Illumina MiSeqなどの小型シーケンサー領域は将来に渡って需要が急増すると予想されるが、この領域は、機器も安価であり、かつユーザは常に性能の良い機器を求 める傾向にあるので、LaserGenのシーケンサーが競争力を持つことが期待できる。 |