OpGenが開発した1分子DNA構造解析技術
新規ゲノム配列のde novo Assemblyを行う場合、繰り返し配列などの存在により、多くの場合でコンティグが連結しない箇所が出てくる。例えば、細菌ゲノムの場合、通常約6 kbのrDNAオペロンが複数コピー存在することから、次世代シーケンサーのみでゲノム配列解析を行うと、多くの場合でrDNAオペロンの部位でコンティグが分断化される。この問題を避けるには、Fosmid libraryなど10 kb以上のサイズのMate-pair DNAライブラリーの配列を決定し、コンティグを連結させる必要がある。OpGenは、このようなライブラリーを用いずに、固定化した染色体DNAを制限 酵素で消化した後に、各DNA分子内の制限酵素による切れ目を観察することにより、物理的な制限酵素地図を作製できる技術Optical Mappingを開発した。Optical Mappingを用いると、以下の4ステップで染色体DNAの構造を分析できる。 (ステップ1)微生物細胞を低融点アガロースゲル内に埋め込み、溶菌させる。70℃加熱によりアガロースを溶解し、さらにβ-Agarase処理により高分子量染色体DNAを放出させる。 (ステップ2)回収した高分子量染色体DNAを、OpGenが開発したOptical Chip device内のマイクロ流路のチャンネルにロードする。 染色体DNAは1分子ごとに並列に直線状に並べられ、静電的に固定される。制限酵素でDNAを切断すると、各切断部位ごとにわずかな隙間が空く。 (ステップ3)制限酵素で消化したDNAを蛍光色素でラベルした後、蛍光顕微鏡を用いてイメージデータを取得する。 イメージ分析ソフトウェアを用いて、各制限酵素断片のサイズと順番に関するデータを取得する。各DNAの制限酵素地図データをもとに、DNAを連結することにより、全ゲノム制限酵素マップ(Optical Map)を作製する。 (ステップ4)ステップ3の制限酵素地図データをもとに、MapSolverソフトウェアを用いることにより、複数種のゲノムDNAの比較ゲノム解析などを行うことができる。 |
Optical Mapping System Argus
OpGenは、上述のOptical Mapping技術を利用したDNA分析機器 “Argus LS Optical Mapping System” を今年中に発売する予定である。本機器の主な用途は、細菌、酵母、カビなどのゲノムサイズが小さい微生物のde novo genomic DNA assemblyである。次世代シーケンサーの登場により膨大な種類の微生物ゲノム配列が解明されたが、ほとんどの場合でコンティグが完全につながらない状態である。Optical Mappingの場合に、サンプル調製段階で生きた菌を準備する必要があるので、各研究機関に機器を販売することにより、コンティグの連結研究が加速化されることが期待される。 |
Optical Mappingの応用
上述したように、Optical Mapping技術の現段階での主な適用は、de novo genomic DNA assemblyである。コンティグのde novo assembly以外に、制限酵素切断パターンが制限酵素断片のサイズの変化に結び付くDNAの欠失、挿入、逆位、転座、重複などの構造変化を検出できることが明らかにされている。さらに、昨年BGI (Beijing Genomics Institute)が、OpGenと提携して、哺乳類や植物などの大きなゲノムのアセンブリーやフィニッシングに対して、Optical Mapping技術の応用を試みることが発表されている。 |