2010年6月25日金曜日

第5世代シーケンサーともいうべき“Halcyon Molecular”のシーケンサーは実現するか


Halcyon Molecularが開発を進めている次元を超えたシーケンサー-欠点のないスペック(性能)

Halcyon Molecular は2003年に設立された次世代シーケンサー開発ベンチャー企業であるが、最近までその活動内容は不明であった。ところが、Halcyon Molecular のシーケンシング技術が現実的なものに近づき、昨年秋から情報も出始めた。Halcyon Molecular シーケンス技術が次元を超えたものであることは、下記の性能を見れば明らかである。
◆予定されているシーケンサーのスペック(性能)
・1分子DNAシーケンシング
・リード長: 150塩基~4,000,000塩基(1リードで4百万塩基です!)
・繰り返し配列も問題なく読める
・配列決定精度: 99.999%以上(ヒトゲノム配列を決定した場合)
・シーケンシング時間: 10分以内(ヒトゲノム配列を決定した場合)
・配列決定コスト: 100ドル以下(ヒトゲノム配列を決定した場合)


シーケンシング原理

Halcyon Molecularは約7年間に渡って次世代シーケンシング技術の開発を続けてきたようであり、最近になってその技術内容が公開された。塩基配列決定については、重金属で塩基をラベルした1本鎖DNAを透過型電子顕微鏡を用いて分析するという手法を用いている。特筆すべき技術は、1本鎖DNAを引き伸ばした状態で密に整列させる手法である。この技術は、"Individual Molecule Placement Rapid Nanotransfer (IMPRNT)"と呼び、「とんでもなく素晴らしい」の一言である。
(1) 塩基のラベリング
 サンプルDNAの調製に関して、まず透過型電子顕微鏡を用いて1本鎖DNAの各塩基を認識できるようにするために、塩基特異的に重金属でラベル化する。ラベル化法は具体的に開示されていないが、チミン(T)はオスミウム(Os)、グアニン(G)はプラチナ(Pt)でラベルするようである。
(2) IMPRNT技術=微細加工ニードルアレイを利用した1本鎖DNAの整列
 極細のニードルを用いて1本鎖にしたDNAを吸い取り、(電子顕微鏡観察する基板の上に)吐き出すことにより、長い1本鎖DNAを伸ばす。ニードルはアレイ状に並んでおり、基板の上に1本鎖DNAを整列した状態で並べることができる。現時点では約10 nmの間隔でDNAを並べることができるが、当面の目標は3 nmである。この微細加工ニードルアレイのスループットは、1時間に1,000,000本のDNAを並べることを目標にしている。
(3) 塩基配列の読み取り
 基板に密に整列した1本鎖DNAは塩基特異的に重金属でラベル化されているので、透過型電子顕微鏡を用いて一気にイメージデータを取り、そのイメージデータを分析することにより、塩基配列を決定できる。“1分子リアルタイムシーケンシング”という語は当てはまらず、“1分子一瞬シーケンシング”とも呼ぶべき技術である。

 Halcyon Molecular のシーケンシング技術は、発表内容を見る限り、かなり現実的なものになりつつあると感じる。シーケンサーの発売時期は不明であるが、とんでもなく素晴らしいシーケンサーになる可能性があるので、GOクラブでは情報を入手したら、随時紹介していきます。