GnuBioが開発した次世代シーケンサーと新しいビジネスモデル-微小水滴を利用した格安シーケンシング
2010年6月2日のConsumer Genetics Conferenceで、新しい次世代シーケンサーベンチャー“GnuBio (ニューバイオ)”がデビューした。GnuBioは、オープンソースのGNU/Linux オペレーティングシステムにちなんだ社名であり、GnuはNewと発音することから、New Companyという意味も込められている。GnuBioは、新開発の次世代シーケンサーを販売するが、それ以外に、ヒトのゲノム配列とフェノタイプの大規模なオープンアクセスデータベースを構築し、そのデータベースを活用するビジネスを計画している。
GnuBioのシーケンサーは、ハーバード大学物理学科のDavid Weitz教授が開発したシーケンシング技術を利用している。Weitz教授が本技術をもとに約2年前にGnuSeqを設立し、そのGnuSeqを引き継ぐ形で、昨年末にGnuBioが設立された。GnuBioのシーケンシング技術は、1分子シーケンシングでなく、増幅したDNAを利用する。シーケンス反応は、pLの水滴にするので、試薬代が大幅低減されるという特徴を持っており、ヒトゲノムの配列決定コストは100ドル以下になる。具体的には、DNAを1 kb程度に断片化して、nLの水滴内でPCR反応を行う。続いて、pLの水滴にし、シーケンシング反応(現行はハイブリダイゼーション&ライゲーション法)を行い、蛍光をCCDカメラで検出して配列を読む仕組みである。なお1秒間に数百万個の水滴を分析できる。ヒトゲノム配列決定は、30倍の冗長度で、10時間で終了する。またヒトゲノム配列決定コストを$30ドルにすることを目指している。シーケンサー(βバージョン)は、2010年12月中旬からアーリーアクセスを開始する予定であり、市販するシーケンサーの予価は$45,000と発表された。 |
GnuBio-“バイオマーカーのeBay”になる!
GnuBioのJohn Boyce氏は、同社が“バイオマーカーのeBay”になることを目指すとアナウンスした。eBayは電子商取引インターネットモールであるが、GnuBioは、ヒトのゲノム配列とフェノタイプの大規模なオープンアクセス匿名化データベースを構築し、そのデータベースを製薬企業などに有償で提供するビジネスを行う予定であることから、“バイオマーカーのeBay”という語を選んだ。GnuBioによると、病院やアカデミアよりも、民間企業の方が法規制などの観点から個人のプライバシーが守られるという。したがって、価格が安価であれば(無料に近い価格か?)、膨大な量の匿名化された個人情報のゲノム・フェノタイプ・データベースを構築できるだろうという計画である。GnuBioは、このデータベースはバイオマーカー発掘研究におおいに役立つので、ライセンス収入が得られると見込んでいる。
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