uBiomeのIndiegogoによる資金調達
クラウドファンディングとは、Wikipediaの記載によると、「不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うこと」を意味する。uBiomeは、個人向けのマイクロバイオ―ム解析サービスを広めるために、Indiegogoのクラウドファンディングサービスを活用した。Indiegogoは、クラウドファンディングのサービス提供組織としては、米国では第2番手である。uBiomeは、100,000ドルの資金を集めてマイクロバイオ―ム解析サービスを提供することを2012年12月に企画し、2012年11月16日から2013年2月18日までの約3か月間で、2,500人以上から351,193ドルの資金を集めた。この資金調達は、1人あたり約140ドルの提供となる。腸内細菌の解析料は標準89ドルであるので、初期のuBiomeの運転を進めるのにかなり役立ったと思われる。また、2,500人以上の市民から資金提供を受けたことは、uBiomeのサービスが一般に受け入れられる可能性を示したといえる。 |
クラウドファンディングとバイオベンチャー
米国でクラウドファンディング事業を行っている第1番手の組織は、Kickstarterである。KickstarterとIndiegogoの比較については、Jonathan Lau氏が自身のブログにおいて2013年8月28日付で紹介している記事が参考になる。このブログ情報によると、KickstarterとIndiegogoが収集した資金額は、それぞれ612百万ドルと99百万ドルであり、Kickstarterの方がIndiegogoと比べて約6倍資金を集めたと分析している。 このような差が付いた理由として、両社のビジネスモデルの差が影響していると推察されている。Kickstarterの場合には、目標額の資金を調達できた場合には手数料(収集資金額の5%)を支払う必要がある。しかし、目標額に達しなければ手数料を支払う必要もない代わりに、資金は得られない。したがって、成功した場合のみに手数料を支払えばよいため、リスクが少ないという利点があると思われる。 一方で、Indiegogoの場合には、目標額を達成した場合の手数料は収集資金額の4%であり、Kickstarterより安い。しかし、目標額を達成しなかった場合には、収集した資金は得られるものの、手数料は9%と高くなる。つまり、応募すれば資金が得られるという利点があるものの、目標額に達しなかったときのリスクは大きい。 一般的に、バイオテクノロジー分野のビジネスでは、直接消費者に向けたサービスを提供することは少ないので、クラウドファンディングは向いていないと考えられてきた。しかし、Indiegogoの場合には、uBiomeだけでなく、バイオベンチャー企業である TeloMe, Inc. (TeloMe) とExogen Biotechnology, Inc. (Exogen) もキャンペーンが行われた。TeloMeは、細胞の寿命と関係する染色体のテロメア構造の解析サービスを個人向けに提供するベンチャー企業である。Exogenは、DNAの損傷やDNAの修復能を調べる個人向けサービスを提供している。このように、消費者に直接サービスを提供するバイオベンチャーの場合、Indiegogoなどのクラウドファンディングを利用することが増えていくであろう。なお、マイクロバイオーム解析サービスの場合、営利企業(ベンチャー)であるuBiome以外にも、非営利法人であるAmerican Gut が、uBiomeとほぼ同時にIndiegogoを利用し、40万ドルの調達目標に対して1,994名から33万9000ドルの資金を集めた。これはuBiomeとほぼ同じ金額である。 |
uBiomeがYコンビネーターの支援を得て離陸
uBiomeはIndiegogoのキャンペーンを利用して、マイクロバイオーム解析サービスを試験的に提供した後、Y Combinator LLC (Yコンビネーター)の2014年のサマークラスに参加した。Yコンビネーターとは、カリフォルニア州Mountain Viewのベンチャーキャピタルであり、主としてスタートアップ企業に対し投資している。Yコンビネーターは少額の資金を提供するとともに、他の投資家からの資金調達が得られるように教育するのが特徴である。uBiomeは、このサマークラス受講をきっかけとして、エンジェル投資家とベンチャーキャピタルAndreesen Horowitzから、シリーズAファイナンスとして合計450万ドルの資金を調達し、ベンチャー企業として離陸した。
Yコンビネーターは、多額な研究開発投資を必要としないスタートアップ企業の資金調達を支援してきたが、微生物育種ベンチャーであるGingko Bioworks, Inc. を皮切りに、研究開発型のバイオベンチャー/バイオ非営利法人の支援を推進し始めた。uBiomeとGingko Bioworksのほか、Immunity Project (エイズワクチンを開発する非営利法人)、Glowing Plant (昆虫を撃退したり、空気を浄化する機能を持つ植物を開発するベンチャー)も、Yコンビネーターの支援を受けてベンチャー企業として本格的活動を開始している。
以上のように、米国のバイオベンチャーは、個人向けサービス事業を行う企業以外にも、本格的な研究開発を行うベンチャーが、クラウドファンディングやYコンビネーターの支援を得て、ベンチャー企業として創業しているケースが増えていることは興味深い。
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