Oxford Nanoporeの近況
Oxford Naporeのナノポアシーケンサーの発売が遅れている理由については、“Pathogens: Genes and Genomes”のブログと2013年3月7日付けのブルームバーグ(世界の最新経済情報/金融ニュース)に、情報が記載されている。これらの情報によると、シーケンサー発売の延期の理由として、以下の3つが挙げられている。 (1) ナノポア・タンパク質を埋め込んでいる脂質2重膜が酸化されやすいなどの理由で、製品の安定性の課題が浮上した。 (2) カスタム・センサー・マイクロチップが予想通りの性能を示さず、再設計を余儀なくされた。 (3) シーケンシング精度に関して、市販時に1リードのエラー率として1%を達成することを目標としている。なお、上記のブログ中の記載では、この目標を達成できているかについては言及はない。 以上の情報を吟味すると、上記のブログ中にも記載があるが、それほど遠く時期にナノポアシーケンサーが発売されることが期待される。 |
日立ハイテク、Base4 Innovationsと提携
先端機器の開発・製造で信頼がある日立ハイテクが、最近英国の次世代シーケンサー開発ベンチャーであるBase4 Innovations Ltd. (Base4) と提携したが、この提携は注目に値する。両社は、「Base4の技術と日立ハイテクの機器開発力を合体させて、ナノポアシーケンサーの開発を目指すこと」を2013年7月8日に発表している。技術・機器の詳細は発表されていないが、プロテインナノポアでなく、ソリッドステートナノポアを用いたシーケンサーを開発しているものと予想する。検出方法は、ナノポアを通過する1本鎖DNAに対して、金(Au)を用いたナノ構造体によって増強されたレーザー光を照射して塩基を検出する仕組みのようである。DNAの増幅反応や、蛍光標識によるラベル化が不要なため、従来のDNAシーケンサと比べて前処理が簡単で、ランニングコスト削減が実現できるほか、1リード長が非常に長いことを売りにするようだ。Base4は2007年に設立され、これまで約9億円の増資を受けて、技術開発を行ってきた企業である。技術・機器の開発に3年くらいかかるらしいが、来年には何らかの進展が発表されることを期待したい。 |
NorthShore Bio
NorthShore Bio(2009年設立)は、Lux Bio Group, Incの一部として活動している組織で、シリコン・ナノポア・チップとチップ利用機器の開発を行っている。2011年末に、Oregon Angel Fundとthe Institute for Systems BiologyからシリーズAの投資を受けて、研究開発を加速させている。最近(2013年5月10日)に、solid-state “tunable” nanoporesを用いたシリコンチップ分子検出機器を製作できたことを発表した。詳細な内容は発表されていないが、tunable nanoporesという語から、ナノポアのサイズ・チューニングを可能とする技術を開発しているものと思われる。一般に、プロテイン・ナノポアの場合は、精緻な精度でナノポアを作れるが、ソリッドステートナノポアの場合には、サイジングの高精度化やサイズのばらつきの調整は容易でない。 |
Two Pore Guys
Two Pore Guysは、カリフォルニア大学Santa Cruz校からのスピンアウトによって、2011年に設立された次世代シーケンサー開発ベンチャー企業である。利用技術は カリフォルニア大学から2012年にライセンスを受けている。 Two Pore Guysを取り上げた理由は、最近Two Pore Guysの技術がYouTubeで公開されたからである。YouTubeの紹介ビデオによると、この企業のコア技術は、2層のソリッドステート・レイヤーに存在するナノポア(合計2個)に1本鎖DNAを通過させてDNAの通過速度を制御する技術である。上層レイヤーに電圧をかけると、まず1個目のナノポアをDNAが通り、続いて下層レイヤーに電圧をかけると、2個目のナノポアにDNAが入る。その後、上層レイヤーの電圧を反転させることにより、DNAを戻すこともできる。このような手法により、DNAが通過する速度や向きを制御できることが売りである。塩基の検出は、2層のソリッドステートレイヤーの中間に、1塩基レベルの精度で認識できるセンサーを設置することにより行う。 |